犬や猫の治療で使う漢方とは|漢方薬の効果や副作用の有無を解説
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漢方とは植物の葉、茎、根などの自然由来のものから有効成分を抽出した生薬を複数組み合わせ、患者の体質に適した体の全般の症状に対応できる薬のことです。
漢方は古来の中国で発展した伝統医学であり、「病気ではなく病人をみる」という概念のもとにそれぞれの症状ではなく、体全体のバランスを整え健康へと導く薬となっており、犬や猫の治療に使われる漢方も同様の考えのもと処方されます。
皆様が普段よく使われる抗生剤や痛み止めは、漢方薬と対比して「西洋薬」と呼ばれます。
漢方薬、西洋薬にはそれぞれのメリットがあり、どちらがより優れているというものではありません。それぞれの得意分野を組み合わせて処方することが大切です。
今回は犬や猫の治療で使う漢方について解説していきます。
■目次
1.ペットの治療で使う漢方とは
2.漢方が使用されるタイミングや疾患
3.漢方を使用するメリット
4.まとめ
ペットの治療で使う漢方とは
一部の生薬は犬や猫にとって好ましくない成分を含むため、全ての漢方が犬や猫の治療で使える訳ではありません。
そのため、飼い主様が飲んでいる漢方を安易に与えることは絶対にやめましょう。
漢方の有名な考え方として、人や動物の体は「気」「血」「津液」の3つで構成されていると考えられています。
「気」は目には見えないが体を動かすエネルギーのようなもの
「血」は全身を巡り、身体中の組織や器官に栄養を与えるもの
「津液」は口から摂取した水分が全身を巡って、身体中を潤すもの
これらの3要素がバランスよく保たれている状態が健康であり、これらの3要素が1つでも過剰になるか不足すると、体に異常が現れると考えられています。
気血津液弁証の他にも、八網弁証(表・裏・寒・熱・虚・実・陰・陽のことで、中医学の基本になる概念)や臓腑弁証(五臓六腑の観点から病気の状態を判断する方法)など様々な角度から患者を診て適切な治療を行い、病気に合った漢方薬の処方を行ないます。
漢方が使用されるタイミングや疾患
漢方が使用されるタイミングとしては、以下のとおりです。
・一般的な薬では症状の改善が見られないとき
・「どこか体調が悪そう」などの不定愁訴(客観的所見に乏しく、原因となる病気が見つからない状態)が見られるとき
・針灸治療の効果増強を狙うとき
(八味地黄丸や牛車腎気丸、加味逍遙散、当帰芍薬散はめぐりを整え、針灸治療と相性が良い)
・ステロイド剤の投与量を減らしたいとき
・がん治療の補助として
漢方を使用するメリット
漢方を使用する一番のメリットは、通常の薬(西洋薬)と比べて副作用が非常に少ないことです。
通常の薬は有機合成反応によって作られた化合物や、天然物などから抽出された化合物が含まれているため、薬によってはアレルギー反応やアナフィラキシーショックを示すことがありますが、漢方薬は多成分で構成されており、それぞれの成分の含有量が少ないので副作用を起こす危険性が極めて少ないです。
さらに漢方は、痛みを感じたら痛み止めというように病気の個々の症状を治すのではなく、
体質そのものを改善するため、ホルモンバランスの乱れや原因がはっきりとしない病気の予防などにも有効です。
また、「西洋薬は効き目が早く、漢方薬は効き目が遅い」という認識を持たれている方が多いかと思います。実は、この考えは誤りで、適切な漢方を選択すれば症状改善にあまり時間はかかりません。
まとめ
犬、猫の治療に漢方を使用している病院はまだまだ少ないですが、正しい漢方の知識を持って治療を行えば大きな治療効果を得られます。
「どこか調子が悪そう」といった西洋医学ではなかなか対処が難しい症状でも、漢方を使って体質を改善すれば治療することができるので、ペットの健康にお悩みがある方は是非一度当院にご相談ください。
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