慢性細菌感染の治療 ‐オゾン療法‐
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慢性の細菌感染に対する治療の選択肢のひとつとして、高い殺菌作用を持つオゾンガスを利用した「オゾン療法」に注目が集まっています。副作用や耐性菌の心配がなく、動物の体に大きな負担をかけずに治療を行えます。
今回は、慢性の細菌感染とオゾン療法について、詳しく解説します。
■目次
1.オゾン療法とは?
2.慢性細菌感染とは?
3.犬と猫における一般的な細菌感染の種類
4.症状
5.診断方法
6.治療方法
7.まとめ
オゾン療法とは?
オゾン療法とはオゾンガスを利用した治療法のことです。オゾン(O3)は、酸素(O2)の3原子が合わさった同素体で、その強力な酸化作用により細胞レベルで治療効果を発揮します。
この作用は、病原体を直接破壊するだけでなく、血液の循環を改善し、酸素の利用効率を高めることにより、免疫の向上や抗酸化作用などの効果を期待できるのです。
また、炎症を抑制し、痛みを軽減し、免疫系のバランスを整える効果も報告されています。
なお、オゾンガスは時間が経過すると無害な酸素に変わるため、体の中には蓄積されません。
慢性細菌感染とは?
慢性細菌感染とは体内に細菌が侵入し、長期間にわたって体内に留まり続ける状態を指します。これは、一時的な感染よりも深刻な症状を引き起こすことがあり、完治が難しい場合もあります。
原因としては、免疫力の低下、不適切な衛生状態、または以前の感染症から完全に回復していない場合などがあります。
犬と猫における一般的な細菌感染の種類
犬や猫は皮膚感染、尿路感染、耳感染など、さまざまな種類の細菌感染にかかりやすい傾向があります。これらの中には、軽度から重度まで症状が異なり、場合によっては動物の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。
原因菌は病気の種類によって異なりますが、犬や猫に細菌感染を引き起こすものにはブドウ球菌や大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌症、カンピロバクター、真菌症、トキソプラズマ病などがあります。
また、細菌は体の外から入ってくるケースもありますが、ブドウ球菌や大腸菌などは健康な犬や猫の体にも存在している「常在菌」と呼ばれている菌です。
健康な状態であれば何か悪さをすることはありませんが、免疫力の低下など何かしらのきっかけで常在菌が異常に増殖してしまうと、病気を引き起こしてしまいます。
症状
細菌が増える場所によって引き起こされる症状はさまざまです。
例えば、皮膚に細菌が増えた場合は、赤みや痒みなどの皮膚症状が現れます。腸内でサルモネラ菌、ブドウ球菌、大腸菌などが増えると、嘔吐や下痢などの消化器系の症状を引き起こします。
呼吸器に影響がある場合は、咳や肺炎が見られることがありますし、尿路に問題がある場合は、頻尿、血尿、排尿困難などの症状が出ることがあります。
さらに、細菌感染は長期にわたる発熱、疲労感、食欲不振、体重減少などの全身症状をもたらすこともあります。
診断方法
細菌感染の診断は、まず犬や猫の全体的な健康状態を観察し、細菌感染を示す可能性のある症状を評価することから始められます。これには、発熱、活力の低下、食欲不振、特定部位の腫れや赤み、下痢や嘔吐の有無などが確認されます。
その後、血液検査をはじめとするさまざまな検査が行われます。完全血球検査(CBC)や生化学プロファイルを通じて、体内での炎症の兆候や各器官の機能状態が詳細に調べられます。これらの検査により、細菌感染の有無や感染が体に与えている影響が明らかになります。
さらに、感染の原因を特定するために、以下のような検査を行います。
<塗抹検査(スメア検査)>
細菌やその他の微生物の存在と種類を特定するために実施します。
検査材料をスライドガラスに取って染色し、細菌の形や大きさなどを顕微鏡で観察する検査です。
<培養検査>
体から採取したサンプル(例えば、血液、尿、傷口からの分泌物など)に含まれる微生物を特定し、増殖させる検査方法です。感染を引き起こしている特定の細菌やその他の微生物を知るために行います。
<感受性試験>
培養検査で確認された細菌が、特定の抗生物質に対して感受性を持っているかどうかを評価するための検査です。このテストは、感染を効果的に治療するために使用すべき抗生物質を特定する目的で行われます。
必要に応じて、X線や超音波、MRIなどの画像診断を行い、感染の場所や影響を受けた組織の状態をより詳細に評価することがあります。
場合によっては、特定の細菌のDNAを検出するためのPCR検査など、さらに特殊な検査が実施されることもあります。
治療方法
細菌感染をしている場合には、主に抗菌薬を使用して治療を行います。ただし、慢性の細菌感染の場合、長期的に抗菌薬を使用してしまうと、抗菌薬に抵抗性を示す「耐性菌」が現れてしまう可能性があります。
そのため、代替の治療法がある場合には、なるべく抗菌薬を使用せずに治療を進めていきます。その選択肢の一つに、高い殺菌作用を持つオゾンガスを利用した「オゾン療法」があります。オゾン療法は副作用の心配がほとんどないうえに、耐性菌が現れないという一面も持ち合わせています。
まとめ
慢性の細菌感染は治療を続けていくことで耐性菌が出現するリスクが高く、抗菌薬に代わる治療法を積極的に取り入れていく必要があります。そのため、耐性菌の心配がないオゾン療法は、愛犬や愛猫にとっても飼い主さんにとっても安心して治療を受けられます。
当院ではオゾン療法以外にも、動物の体に備わっている「治そうとする力」を活かし、ホモトキシコロジーや漢方を使った負担の少ない治療を行っています。慢性の細菌感染にお悩みの方は、ぜひ一度当院までご相談ください。
■ホモトキシコロジーについてはこちらで解説しています
・犬や猫のホモトキシコロジーとは|ドイツ発祥の自然療法の一つ
■オゾン療法はこちらの記事でも解説しています
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<参考>
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/attach/pdf/torikumi-25.pdf