犬と猫の皮膚病と鍼灸について|鍼灸治療と予防法の知識を深める
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皮膚病は診察時に比較的多く遭遇する病気の一つで、多くは内用薬や外用薬を使った治療を行いますが、治療が長引くケースも多く見られます。
一方で、鍼灸は古代中国から伝わる自然治癒力を高める治療法であり、近年では人間だけではなく動物に対してもその効果が認められています。
今回は、犬と猫の皮膚病と鍼灸について解説していきます。
■目次
1.皮膚病が起こる原因とよく見られる病気
2.症状
3.診断方法
4.従来の治療法
5.鍼灸治療の概要
6.予防方法やご家庭での注意点
7.まとめ
皮膚病が起こる原因とよく見られる病気
皮膚病は以下のように、原因ごとに病気の名前が異なります。
・アレルギー性皮膚炎:ノミや花粉などに対する環境アレルゲンや食物アレルゲンによって引き起こされる炎症で、かゆみや赤みが特徴です。
・脂漏症:皮膚の過剰な脂分泌によって起こる病状で、フケの増加や皮膚の臭いが伴います。
・寄生虫による皮膚病: ノミ、ダニ、マダニなどの寄生虫が原因で、かゆみや脱毛、炎症を引き起こします。
・細菌性と真菌性の感染症:細菌や真菌による感染で、皮膚の赤み、腫れ、膿を伴うことがあります。
また、内分泌疾患や自己免疫疾患、腫瘍などの一症状として、皮膚病が見られることもあります。
症状
皮膚病を発症すると、身体を過剰に掻いたり、舐めたり、噛んだりする行動や、特定の部位の毛が抜ける脱毛の症状が見られます。
また、皮膚が赤くなる、触ると熱を持っているような炎症の兆候や、長期間にわたる炎症や感染症は、皮膚の変色や硬化を引き起こすことがあります。
診断方法
まずは皮膚に異常がないかどうかを確認するために各種皮膚検査を行います。
・被毛検査:毛を抜いて外部寄生虫感染の有無や毛の状態を顕微鏡で観察します。
・皮膚掻爬(ソウハ)検査:皮膚の一部を専用の器具で削り取って外部寄生虫感染の有無を顕微鏡で観察します。
・スタンプ検査:病変部にスライドグラスを押し付けて染色し、細菌・真菌の感染の有無や細胞の種類などを顕微鏡で観察します。
また、感染症以外の病気が疑われる場合には、血液検査や病理検査なども行います。
従来の治療法
皮膚病に対して従来行われている治療法には、主に薬物療法や外用薬の使用があります。
これらの治療法は、細菌や真菌による感染症に抗生物質や抗真菌薬を使用すること、皮膚の炎症を抑えるためにステロイドや抗炎症薬を処方すること、そして皮膚の清潔を保ち症状を和らげるためにシャンプーやクリーム、ローションを使用することが含まれます。
これらの方法は症状を緩和する上で効果的ですが、副作用のリスクや症状の再発の可能性もあるため、代替療法に関する関心も高まっています。
鍼灸治療の概要
鍼灸は、体の特定の点に細い鍼を刺すことで、体の自然な治癒力を促進し、健康状態を改善する伝統的な中国医学の治療法です。人間の医療における鍼灸の使用は広く知られていますが、動物に対する鍼灸治療も効果的であるとされています。
鍼灸治療は関節の痛みや椎間板ヘルニアといった痛みを伴う整形疾患に対して施術するもの、というイメージが強く、皮膚病に効果があるのか疑問に思う飼い主様も多いかもしれません。しかし、鍼灸治療は、血流の改善、炎症の軽減など、免疫力を上げて自然治癒力を高める効果があるため、手術が必要なケースなどを除き、皮膚病を含むほぼすべての病気が適応疾患となります。
そして、鍼灸治療の最大の利点は、副作用が非常に少ないことです。
これは、体の自然な治癒力を促進することに重点を置いているためであり、これにより、従来の薬物治療に伴う副作用のリスクを避けられます。
また、従来の医療治療と組み合わせて使用することで、症状の管理をより効果的に行うことが可能になります。さらに、鍼治療はリラックス効果もあり、ストレスや不安を軽減するのに役立ちます。
なお、鍼灸治療が皮膚病に及ぼす効果は多くの事例研究を通じて実証されています。一つの例として、アトピー性皮膚炎を患っていた犬や猫が鍼灸治療を受けた結果、症状の顕著な改善が見られたケースがあります。
治療前には激しいかゆみと脱毛に悩まされていましたが、数回の治療後にはかゆみが軽減し、皮膚の状態も改善されました。
予防方法やご家庭での注意点
予防のためには皮膚のコンディションを健やかに保つことが大切です。日々のブラッシングや定期的なシャンプーなどを行い、しっかりとスキンケアをしてあげましょう。
また、東洋医学的治療は病気を治すだけでなく、病気の予防にも効果的です。そのため、体質的に皮膚が弱い場合などは、皮膚病を発症する前の段階から施術を受けるようにするのもおすすめです。
まとめ
犬や猫に鍼灸は難しいのでは?と心配になる方も多いと思いますが、気持ちよさそうに治療を受ける子も多く、意外にも施術中はじっとしてくれます。
当院でも各種東洋医学的治療を導入していますので、長引く皮膚病にお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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<参考>
小動物臨床鍼灸学(日本伝統獣医学会)