犬と猫の乳腺腫瘍と漢方の治療について|しこりに気づいたらすぐに動物病院へ
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乳腺腫瘍は犬と猫に比較的よく見られる腫瘍のひとつです。基本的には手術による治療が必要ですが、末期の場合には薬によって痛みを和らげたり、漢方薬によって免疫力を高めたりする緩和ケアを行い、QOLを維持していきます。
今回は、犬と猫の乳腺腫瘍とはどのような病気なのか、そして漢方をはじめとする治療方法について詳しく解説していきます。
■目次
1.症状
2.診察方法
3.治療方法
4.気を付けるべきポイント
5.まとめ
症状
良性の乳腺腫瘍はほとんどの場合、小さなしこりが見られる以外に目立った症状はありません。
しかし、悪性の乳腺腫瘍では、しこりがどんどん大きくなり、しこりの表面の皮膚が破れて(自壊)しまうことがあり、痛みから元気がなくなったり食欲が落ちたりすることもあります。
また、悪性腫瘍はリンパ節や体の中の臓器に転移することもあり、肺に転移すると呼吸が苦しくなり、命を落としてしまうケースもあります。
診察方法
まずは問診や視診、触診によって、しこりの成長スピードや大きさ、自壊の有無、リンパ節の腫れなどを確認します。
その後、画像検査を行い転移していないかの確認や、しこりに針を刺して細胞を観察する細胞診を行います。ただし、これらの検査結果からは良性か悪性かの判断はつきません。
確定診断のためには手術でしこりを切除し、病理検査を行う必要があります。
治療方法
乳腺腫瘍の主な治療法は手術です。手術でしこりを取り除くことで、腫瘍の進行を防ぎます。
また、転移が確認された場合や、手術後に悪性腫瘍と診断された場合には、抗がん剤治療を行うこともあります。抗がん剤は腫瘍の成長を抑えるために使用されます。
末期にまで進行している場合には、痛みを取り除きQOLを高めるための緩和ケアが重要です。一般的には痛み止めを使い、痛みが強くなってきたら鎮静剤や局所麻酔薬などを併用します。
また、緩和ケアには漢方治療もおすすめです。漢方治療は、体力や免疫力を向上させることで元気や食欲を取り戻す効果が期待できます。
さらに、漢方治療は緩和ケアだけでなく、術後の疼痛ケア、転移・再発予防、抗がん剤による副作用の軽減などの効果も期待できます。漢方薬は自然の成分を使用しているため、副作用が少なく、長期的な健康維持に役立ちます。
気をつけるべきポイント
乳腺腫瘍は早い段階で避妊手術すると、高い確率で発生を予防することができます。
【犬】
<避妊手術の実施時期> | <乳腺腫瘍の予防率> |
初回発情前 | 99.5% |
初回〜2回目の発情 | 92% |
2回目以降 | 74% |
【猫】
<避妊手術の実施時期> | <乳腺腫瘍の予防率> |
〜6か月齢 | 91% |
7〜12か月齢 | 86% |
12〜24か月齢 | 11% |
ただし、犬では2.5歳以上、猫では24か月齢を過ぎてから避妊手術を行っても、乳腺腫瘍の予防効果は期待できません。
そのため、将来的に交配の予定がない場合は、早めに避妊手術の計画を立てることが大切です。
まとめ
乳腺腫瘍は3cm以上の大きさになると予後が悪くなるため、しこりが小さいうちに治療をすることが大切です。日頃から愛犬・愛猫の体をよく触る習慣をつけ、万が一しこりに触れた場合は、なるべく早めに動物病院を受診するようにしましょう。
また、当院では従来の西洋医学に加えて、漢方・鍼灸といった東洋医学を取り入れた統合医療を行っています。個々の動物(環境、食事、体質等)に合わせ、動物専用の漢方薬を処方しており、オーダーメイドの治療ができることが漢方薬の強みです。
東洋医学は、痛みを感じたら痛み止めを、というように病気の個々の「症状」に対して対処する西洋医学の考え方ではなく、体質そのものを改善することを目的としています。そのため、ホルモンバランスの乱れや原因がはっきりとしない病気の予防などにも有効です。
漢方治療に興味がある方や、治療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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