猫の甲状腺機能亢進症と漢方、鍼灸について|食欲はあるのに痩せてきた
- 動物の病気
- 症例紹介
- 院長ブログ
甲状腺機能亢進症は、猫に最も多くみられるホルモンの病気です。この病気になると代謝が異常に高くなり、さまざまな症状が現れます。
治療法としては抗甲状腺薬の投与や手術が一般的ですが、漢方や鍼灸といった代替療法も有効です。
今回は、猫の甲状腺機能亢進症と漢方、鍼灸について解説します。
■目次
1.甲状腺機能亢進症とは
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.気を付けるべきポイント
6.まとめ
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が異常に高くなってしまう病気です。
この病気は特に中〜高齢の猫に多く見られ、原因のほとんどは甲状腺が腺腫性に過形成することで起こり、悪性の腫瘍が原因となることは稀です。
症状
甲状腺機能亢進症の主な症状には、以下のようなものがあります。
・食欲が旺盛なのに痩せてくる
・多飲多尿(水を多く飲むようになり、尿の量も増えます)
・下痢や嘔吐
・攻撃的になる
・活発になる、落ち着きがなくなる
・過剰なグルーミングによる脱毛
・毛並みが悪くなる
・口を開けてハァハァと呼吸をする(運動後でなくても息を荒くすることがあります。)
診察方法
診察の際は、まず問診で猫の年齢や症状について詳しくお伺いします。その後、触診を行い、喉の近くにある甲状腺を確認します。甲状腺が通常よりも大きく腫れている場合は、甲状腺機能亢進症の可能性があります。
さらに、超音波検査を行って甲状腺の大きさを測定し、血液検査でホルモン値を測定します。これらの検査結果をもとに、正確な診断を行います。
治療方法
主な治療方法は、甲状腺の働きを抑えるような薬(抗甲状腺薬)の投与です。しかし、根治は難しいため、重症の場合や薬によるコントロールが難しい場合には、甲状腺を切除する手術が選択されることもあります。
また、漢方や鍼灸といった東洋医学的な治療も効果的です。
東洋医学には「甲状腺機能亢進症」という病名は存在しませんが、東洋医学的な診察により、甲状腺機能亢進症と似たような病状(証)を見つけることができます。そして、その証に合った鍼灸や漢方治療を行うことで、嘔吐や下痢などの症状を和らげることができます。
気を付けるべきポイント
西洋医学的な検査で甲状腺機能亢進症と診断された場合でも、東洋医学的な診断では、必ずしも一つの証(病状)に限定されるわけではありません。
甲状腺機能亢進症は基本的に「陰虚」と呼ばれる、熱を伴う体質から起こります。しかし、熱を多く持ちすぎると「気虚」という、疲れやすく元気がない状態になることもあります。
証によって治療の内容は変わってくるため、飼い主様が自己判断で購入した漢方薬や、別の動物に処方された漢方薬を与えることは避けましょう。必ず専門の獣医師に相談してから治療を進めることが大切です。
まとめ
甲状腺機能亢進症の症状は、一見すると高齢猫が再び元気になったように見えることがあります。しかし、体重減少や嘔吐、下痢などの症状は高齢の猫には多く見られるため、見逃されてしまうケースも少なくありません。
しかし、治療が遅れると腎臓や心臓にダメージを与えることがありますので、定期的に健康診断を受け、早期発見・早期治療を心掛けましょう。
当院では従来の西洋医学に加えて、漢方や鍼灸といった東洋医学を取り入れた統合医療を行っています。
個々の動物の環境、食事、体質などに合わせて、動物専用の漢方薬を処方いたします。オーダーメイドの治療が可能なことが漢方薬の強みです。
東洋医学は、痛みがあれば痛み止めを使うというように症状を直接治すのではなく、体質そのものを改善することを目指します。そのため、ホルモンバランスの乱れや原因がはっきりしない病気の予防にも有効です。
愛犬や愛猫の健康にお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
■高齢猫に多い病気はこちらでも解説しています
・猫の慢性腎臓病とホモトキシコロジーについて|自然治癒力の向上を助ける
・犬や猫の治療で使う漢方とは|漢方薬の効果や副作用の有無を解説
兵庫県丹波市の動物病院なら『にまいる動物病院』
<参考>
・獣医内科学第2版(文永堂出版)
・小動物臨床鍼灸学(日本伝統獣医学会)