犬の脱毛と漢方治療について|原因や当院の治療の事例もご紹介
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犬の毛が抜け始めると「換毛期かな?」と思われる方が多いと思いますが、皮膚が見えるほど脱毛している場合は病気が原因かもしれません。
脱毛の原因はさまざまで、それに応じた治療法も異なりますが、西洋薬と漢方治療を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できることがあります。
今回は、犬の脱毛とそれに対する漢方治療について、詳しく解説していきます。
■目次
1.脱毛の原因や症状
2.診断と治療
3.事例のご紹介
4.ご家庭での注意点や予防法
5.まとめ
脱毛の原因や症状
犬の脱毛の原因はさまざまで、皮膚疾患によるものや、内分泌疾患、腫瘍、遺伝、さらには心因性の脱毛症や原因不明のアロペシアXなど、多岐にわたります。
具体的には、膿皮症やアトピー性皮膚炎、毛包虫症などの皮膚疾患から二次的に発生する脱毛や、クッシング症候群、甲状腺機能低下症といった内分泌疾患が挙げられます。
アロペシアXとは、主にポメラニアンに多発する進行性の脱毛症であり、「ポメラニアン脱毛症」とも呼ばれています。この病気は、毛が成長するサイクルが停止し、広範囲にわたる脱毛が見られるため、「毛周期停止」とも呼ばれます。
特に、クッシング症候群に似た脱毛箇所が現れることから、「偽クッシング症候群」とも称されることがあります。
また、トイ・プードル、シベリアン・ハスキー、サモエド、パピヨン、シェットランド・シープドッグなど、他の犬種でも発症することが知られています。
症状は原因によって異なります。
例えば、皮膚疾患が原因の場合は、痒みや皮膚の赤み、フケなどが見られることが多く、内分泌疾患が原因の場合は、左右対称の脱毛や全身状態の変化(元気の低下、食欲不振、体重変化、おしっこの量の増減など)が現れることがあります。
診断と治療
犬の脱毛の診断には、一般的に皮膚の検査や血液検査が行われます。これらの検査を通じて、脱毛の原因を特定し、それに応じた治療が進められます。
治療法としては、原因に応じた薬の投与やシャンプー療法、食事療法などがありますが、当院ではこれらに加えて漢方治療も取り入れています。
西洋医学では、体の特定の悪い部分に直接アプローチして治療を行いますが、漢方治療は体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで健康を促進する治療法です。
漢方薬は体への負担が少なく、西洋薬と併用することで投与量を減らし、西洋薬の副作用を軽減する効果も期待できます。また、東洋医学では必ずしも病名が必要ではないため、原因不明の脱毛症や対症療法しかできない脱毛症に対しても効果が期待できる治療法です。
事例のご紹介
ここでは、漢方治療が効果的だった事例をご紹介します。
患者様は15歳のオス犬です。他院で約半年間、西洋薬による治療を受けていましたが、思うような改善が見られず、最終的には去勢手術しかないと言われたそうです。しかし、飼い主様は去勢手術をどうしても選びたくなかったため、他の治療法を探して当院へご相談にいらっしゃいました。
そこで、漢方治療を取り入れたところ、約3ヶ月で毛がふさふさと生え揃い、見事に改善しました。
一般的には、薬を与えればそれで良いと考えられがちですが、ストレスを軽減し、体調を整えた状態で薬を使用することで、西洋薬の効果を最大限に引き出すことが可能です。
この事例では、漢方によってイライラ(肝気うっ滞)を和らげながら治療を行った結果、西洋薬の効果を最大限に発揮させることができました。
ご家庭での注意点や予防法
皮膚疾患による脱毛は、日頃からのケアである程度予防することが可能です。愛犬の皮膚を健やかに保つために、定期的なシャンプーやブラッシングを行い、部屋をこまめに掃除して、アレルギーの原因となる物質を減らすよう努めましょう。
また、脱毛は放置してしまうとどんどん広がってしまうことがありますので、早期発見・早期治療が重要です。日頃からスキンシップを大切にしつつ、愛犬の皮膚や毛の状態をよく観察して、脱毛が見られた場合は、できるだけ早めに動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
犬の脱毛は、西洋医学と漢方治療を組み合わせることで、より効果的に治療できる場合があります。ただし、漢方治療は同じ病名や症状であっても、個々の状態に応じて選ぶ漢方薬が異なることがあります。そのため、まずはしっかりと診療を受け、愛犬に最適な漢方薬を選択することが重要です。
もし、なかなか治らない脱毛でお困りの際は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。
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