愛犬の心臓病を漢方で改善!早期発見と東西融合治療の重要性
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犬の心臓病は比較的よく見られる病気の一つで、心臓がうまく機能しなくなると呼吸が苦しくなるなどの症状が現れます。残念ながら心臓病を根本的に治す特効薬は存在しないため、治療は進行をできるだけ遅らせることが目的となります。
しかし、当院では西洋薬による治療に加え、漢方や鍼灸も併用し、犬の生活の質(QOL)を高めるような治療法を取り入れています。
今回は、犬の心臓病に関するよく見られる症状や診断方法、さらに漢方や鍼灸を含む治療方法について解説します。
■目次
1.心臓病でよく見られる症状
2.犬の心臓病の危険性と早期発見の重要性
3.犬の心臓病の種類
4.診断方法や治療方法
5.事例紹介:漢方が心臓病治療に有効だったケース
6.まとめ
心臓病でよく見られる症状
心臓病は初期の段階では無症状であることが多いですが、病気が進行すると次第に以下のような症状が現れることがあります。
・元気や食欲の低下
・咳
・運動を嫌がる
・チアノーゼ(唇や舌が青紫色になる)
・頻呼吸や呼吸困難
・ふらつきや失神
また、残念ながら最悪の場合、突然命を落とすこともあります。
犬の心臓病の危険性と早期発見の重要性
心臓が正常に機能しなくなると、全身に十分な血液や酸素が行き渡らなくなります。その結果、心臓だけでなく、肺や腎臓といった他の臓器にも悪影響が及び、最終的には命に関わる深刻な状況に陥ることがあります。
さらに、心臓病は進行性の病気で、一度進行が始まると止めることが難しく、根本的に治す特効薬も存在しません。
そのため、早期に心臓の異常を見つけることが非常に重要です。異常を早い段階で発見することで、その後の治療や管理によって、犬の予後が大きく変わる可能性があります。
犬の心臓病の種類
「心臓病」といっても、いくつかの種類があり、それぞれ症状や治療法が異なります。主なものを以下にご紹介します。
<僧帽弁閉鎖不全症>
僧帽弁がうまく閉じなくなることで、心臓に負担がかかり、血液が逆流してしまう病気です。特に小型犬や老齢犬に多く見られ、初期には咳や運動を嫌がるといった症状が現れます。進行すると呼吸困難や疲れやすさが顕著になります。
<三尖弁閉鎖不全症>
三尖弁が閉じなくなり、血液が心臓内で逆流してしまう病気です。主に大型犬に見られることが多く、心臓に負担をかけ、元気や食欲が低下するほか、腹水(お腹に水が溜まる)などの症状が出ることがあります。
<拡張型心筋症>
心臓の筋肉が薄くなり、血液を十分に送り出すことができなくなる病気です。主に大型犬に多く見られ、元気の低下や咳、呼吸困難などの症状が進行すると突然倒れてしまうこともあります。
特に僧帽弁閉鎖不全症は発症率が高く、小型犬や老齢犬に多く見られるため、定期的な健康チェックが欠かせません。
診断方法や治療方法
心臓病の診断には、いくつかの方法があります。まず、聴診によって心音を確認し、その後、画像検査や心電図検査、血圧測定などを行います。
さらに、全身の状態を確認するために、血液検査も行います。
治療方法としては、薬物療法と外科手術の二つが挙げられますが、心臓外科手術を行っている動物病院はまだ限られており、通常は薬物療法が選択されることが多いです。
当院では、西洋医学の治療に加えて東洋医学を取り入れることで、より高い治療効果を目指しています。東洋医学では、鍼灸や漢方などを用いる前に「四診」という独自の診察方法を用い、体全体のバランスを確認します。
「漢方や鍼灸は効かないのでは?」と考える飼い主様もいらっしゃいますが、実際にはそうではありません。
確かに漢方や鍼灸で心臓病そのものを治すことはできませんが、全身の状態を整えることで、西洋薬の効果を高めたり、犬の体力をサポートしたりすることが期待できます。
また、現代医学では限られた選択肢しかない場合に、それを補う役割を果たすこともあります。
事例紹介:漢方が心臓病治療に有効だったケース
当院で漢方が有効だった心臓病治療の事例をご紹介します。
ある患者様は、他の動物病院で心臓病と診断され、一般的な心臓病薬であるピモベンダンを使用して治療を続けていました。
しかし、薬の服用を始めてから下痢が続くようになり、やむを得ず薬を中止しました。その結果、食欲もなく咳もするようになるなど心臓病の症状が悪化してしまい、当院を訪れました。
当院では、まず漢方を処方し、治療を始めて最初の1週間で咳が落ち着きました。しかし、まだ元気が戻っていなかったため、さらにもう1種類の漢方を追加しました。その結果、元気と食欲が回復し、愛犬の生活の質(QOL)が大幅に改善したのです。
心臓病は、呼吸の苦しさから生活の質が低下しやすい病気ですが、漢方や鍼灸を取り入れた治療は、こうしたQOLの低下を和らげ、少しでも長くごはんを食べたり、自分の足で歩いたりするサポートができます。
まとめ
適切な食事管理や適度な運動を行うことで、ある程度心臓への負担を軽減することはできますが、心臓病は根本的な予防が難しく、初期の症状が目立ちにくいことが特徴です。そのため、定期的に健康診断を受けて、早い段階で心臓の異常に気づくことが非常に重要です。特に、1年に1回の健診を目安にし、6歳を過ぎたら半年に1回の健康診断を受けることをおすすめします。
当院では、西洋医学に加えて漢方や鍼灸などの東洋医学も取り入れた統合医療を行っています。愛犬の環境や食事、体質に合わせて動物専用の漢方薬を処方し、一頭一頭に合わせたオーダーメイドの治療が可能で、漢方の持つ大きな強みの一つでもあります。
東洋医学は、痛みを感じたときに痛み止めを使うような対症療法とは異なり、体質そのものを改善することを目的としています。そのため、ホルモンバランスの乱れや、原因がはっきりしない病気の予防にも効果が期待できます。
愛犬の健康についてお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
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