犬や猫の健康を支える胃腸の役割|東洋医学が教える慢性病との関係
- 動物の病気
- 症例紹介
- 院長ブログ
犬や猫にとって、胃腸が全身の健康にどれほど重要な役割を担っているかご存じでしょうか?東洋医学では、胃腸は単なる消化器官ではなく、体全体の健康を支える「要(かなめ)」としてとても重要視されています。
今回は、犬や猫における胃腸の働きの重要性や、慢性病との関係について解説します。
■目次
1.胃腸が果たす重要な役割
2.慢性病と胃腸の関係
3.胃腸ケアが慢性病改善の鍵
4.胃腸の健康を保つためのアプローチ
5.実際の治療の流れ
6.まとめ
胃腸が果たす重要な役割
東洋医学では、世の中のあらゆるものが「木・火・土・金・水」の5つの要素で構成され、それらが互いに協調や抑制をすることでバランスが保たれると考えられており、この考え方を「五行論」と呼びます。
そして木・火・金・水は、すべて「土」がなければ成り立ちません。そのため、「土」は中心的な存在とされ、木・火・金・水に体のエネルギーである「気」と、栄養となる「血」を生み出し、供給する役割を担っています。
この五行論に基づくと、胃腸は「土」に分類されます。つまり、胃腸は体全体を動かす中心的な臓器と位置づけられているのです。そのため、胃腸の働きが弱まると、気や血が不足しやすくなり、以下のような不調が現れることがあります。
・食欲不振
・下痢
・倦怠感
慢性病と胃腸の関係
慢性病は、体内の「気・血・津液(しんえき)」のバランスが乱れることで引き起こされると考えられています。
特に以下のような状態があると、慢性病が発生しやすくなると言われています。
・気虚(ききょ): 気が不足している状態
・気鬱(きうつ): 気の流れが滞っている状態
・血虚(けっきょ): 血が不足している状態
・瘀血(おけつ): 血の流れが滞っている状態
・痰湿(たんしつ): 津液の代謝が悪く、体内に余分な水分が停滞している状態
胃腸ケアが慢性病改善の鍵
慢性病を改善するには、気・血・津液の乱れを整えることが重要です。そのために欠かせないのが胃腸のケアです。
胃腸は食べ物を消化・吸収し、そこから得た栄養をもとに気・血・津液を作り出し、それを全身に送るという大切な役割を担っています。
胃腸の調子を整えることで、体内の気の巡りが良くなり、気・血・津液のバランスを取り戻すことができます。このため、胃腸のケアは慢性病の改善や予防において重要なポイントといえるのです。
胃腸の健康を保つためのアプローチ
日頃から胃腸の健康を守ることは、愛犬や愛猫の全身の調子を整えるうえでとても大切です。以下の方法を参考に、胃腸を健やかに保つ工夫を取り入れてみましょう。
<食養(しょくよう)>
食養とは、食材が薬と同じように体に作用するという「薬食同源」の考え方に基づき、食事で体調を整える養生法です。胃腸を健やかに保つためには、以下の点を意識してみてください。
・消化に良い食材を選ぶ
・胃腸に負担をかけない調理方法を工夫する
・愛犬や愛猫に合った食事量を守る
<漢方治療>
漢方薬は、植物の葉や茎、根などから抽出した自然由来の生薬を、体質や症状に合わせて組み合わせた治療薬です。漢方の特長は、病気に発展する前の「未病」の状態にもアプローチできる点です。
胃腸の不調が続いている場合や、体調の変化が気になる場合は、漢方治療を取り入れることで病気の予防につながることがあります。
漢方薬の処方は、患者さん一人ひとりの体質や症状を詳しく診断する「弁証」に基づいて決められます。これにより、個々に合わせた治療を進めることができます。
<ストレス解消>
ストレスが溜まると自律神経のバランスが崩れ、胃腸の機能が低下してしまいます。犬や猫は、運動不足や飼い主様とのコミュニケーション不足、環境の変化などに敏感で、大きなストレスを感じやすいと言われています。
そのため、適度に運動をしたりスキンシップの時間を増やしたりして、できるだけストレスを溜めない生活を心がけましょう。
<適度な運動>
適度な運動は腸の動きを活発にし、自律神経を整える効果が期待できるため、おなかの調子を整えるうえでとても大切です。散歩やおもちゃを使った室内遊びなど、日常の中で無理なく体を動かす時間を作ることで、健康的なリズムを保ちやすくなります。
体調や年齢に合わせて運動を取り入れましょう。
実際の治療の流れ
治療を始めるにあたり、まずは西洋医学的検査(血液検査、画像検査、糞便検査など)や東洋医学的検査(四診)を行い、病気の原因や体の状態(証)を詳しく調べます。
そして検査結果に応じて薬物療法や手術といった西洋医学的治療を行う場合もあれば、漢方薬の処方や鍼灸治療といった東洋医学的治療を選択することもあります。
また、西洋医学と東洋医学を組み合わせることでそれぞれの強みを活かし、相乗効果によるより効果的な治療を目指します。
まとめ
胃腸は、動物の健康を支える中心的な役割を担っており、胃腸の働きが弱まると、食欲不振や体調不良など、さまざまな不調が現れやすくなります。
そのため、日頃から食養や適度な運動を取り入れ、胃腸の健康を意識した生活を心がけることが大切です。
また、必要に応じて漢方治療や鍼灸といった東洋医学のケアを活用することも効果的です。
当院では西洋医学に加え、漢方や鍼灸などの東洋医学を取り入れた統合医療を実施しています。
愛犬や愛猫の生活環境や食事、体質に合わせて、動物専用の漢方薬を処方し、一頭一頭の状態に寄り添ったオーダーメイドの治療を行っています。
さらに、東洋医学では一時的に症状を抑えるのではなく、体質そのものを整えることを目指します。そのため、ホルモンバランスの乱れや原因が明確でない不調の改善、さらには病気の予防にも効果が期待できます。
愛犬や愛猫の健康についてお悩みがある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。西洋医学と東洋医学の両方のアプローチを通じて、大切な家族である愛犬や愛猫の健康をしっかりとサポートいたします。
■関連する記事はこちらで解説しています
・犬と猫の食欲不振について|ストレスや病気が隠れているかも?
・犬がおなかの調子が悪い?|漢方による下痢などの消化器系トラブルの治療について
・シニア期(高齢期)に起こる食事の変化|愛犬・愛猫の食生活は大丈夫?
・犬や猫の慢性的な便秘と漢方の治療について|便秘で苦しむ愛犬・愛猫を救う
兵庫県丹波市の動物病院なら『にまいる動物病院』
<参考>
これ1冊できちんとわかる 図解 東洋医学(株式会社マイナビ)